昨年春、「がじゅまる通信」(平成25年5月23日付)でもふれましたが、平成27年4月から施行される「子ども、子育て支援新制度」が現在、厚労省社会保障審議会で論議され、最終的なまとめに入っているようです。今後のわが国の保育制度の根幹に関わる大改革と申し上げてもよいものです。まだまだ不確定な部分もあるようですが、私ども法人とも大きく関わることですので、今後とも私なりの整理をしながらご報告していこうと思っています。
今回はまず一連のいきさつ、流れをおさらいしてみます。
平成24年3月、民主党野田政権は、急激な少子化の進行や子育てに対する支援対策として、
当時の小宮山洋子厚生労働大臣は、衆議院本会議で、「子ども・子育て支援を通じて未来への投資を強化することにより、全世代対応型の社会保障制度の実現を目指す」と述べ、消費税増税による国民生活の負担増大が予想される中、三法案の目指す新しい子育て支援制度は「現役世代向けサービスの目玉」であり、子ども・子育て新システムの実現は「社会保障と税の一体改革の『一丁目一番地』である」と訴えました。
申すまでもなく現在の日本において少子高齢化対策は政策の最重要課題です。皆さんは既にお分かりのことだと思いますが、急激な少子高齢化の進行が何故問題なのか、もう一度簡単に説明しておきます。
少子高齢化社会の原因については様々な観点がありますが、大きな原因の一つとして出生率の低下が挙げられます。少子化とは、生まれる子どもの数が減少し、現在の人口を維持できないばかりか、経済や社会保障(特に年金)、労働市場などに大きな影響を与える深刻な問題です。人口構成が変わらずに総人口が減るだけなら、大きな問題は無いと思われますが、子供が減り続けていき、高齢者が増えるのであれば、働く人の割合が低下します。そうすると、働く人が減ると同時に、ひとり当たりの面倒をみないといけない人の割合が多くなり、年金等の社会保障制度の負担が大きくなり、また働く人が減ることにより経済成長が鈍化するなど様々のデメリットが生まれます。
経済規模の縮小も起こるかもしれません。30歳未満の若年労働者が減るということは、消費者としても減少することであり、消費市場の縮小も影響として大きいのです。
3番目に社会保障負担の増大です。社会保障の国民の負担率は、2011年で35.9%(消費税を含むと38.8%)ですが、2025年には39.0%(同52.1%)、2050年には51.0%(同71.3%)と急激に負担が増える見込みです。
つまり少子化が進行し、働く人々が減少することは日本の国力や経済力の弱体化をもたらし、今後一層顕在化する高齢化社会の出現と共に今まで私たちの生活や暮らしを支え守ってきた年金や医療、福祉、いわゆる生活保障制度が経済力の衰退と共に維持できなくなり、日本の社会、その存在基盤そのものが危うくなってくるのです。
さらに今の日本では少子化の問題と共に家庭や地域における“養育力”の低下という問題もあります。日本の社会構造の歴史的な変化や推移の中で、家庭や社会的環境から生じる子どもを育てる、その “育てにくさ”の問題も大きな課題になって来ています。
そこで少子化(産みにくさ)、“養育力”の低下(育てにくさ)、これらの課題の解決に向けて、保護者が子育てについて第一義的責任を有するという基本的認識のもと、出生率低下に歯止めをかけ、“子どもを産み、育てやすい社会”の実現を目指して、自公民3党が合意、制定されたのが「子ども、子育て関連三法」です。
ここで見落としてはならない大切なことは、この三法、そして「子ども、子育て支援新制度」は、社会保障と税の一体改革の中に位置付けられたということです。これまで社会保障経費とは医療、年金、介護、この三分野だけだったのです。そこに初めて「子ども・子育て支援」が加わりました。それほど重要でまた歴史的にも画期的なことだと思います。つまり他の介護・福祉・年金などと合わさった日本の社会保障制度の一大改革であるということです。
「子ども、子育て関連三法」のおおよその概要をまとめると以下のようなものになります。
この新制度、制度変更で市町村の役割と責任はさらに拡大されます。
認可に加えて市町村の確認が必要となり(確認の基準は、国の示す方法に基づき条例で定めます)、認定権限は、政令、中核市に移譲されます。
―等々、大きな変化があります。保育の実施主体は市町村である点、入所申込み、入所決定は市町村ということなど基本的な枠組みはすぐ様変わらないと思いますが、「確認」を得ないと公費を受け取れません。「みなし確認」を得ることができますが、その後「確認」の基準を満たされていない点があると取消となります。
保育所における費用は市町村から委託料として支払われ、保育所への公費負担に変化はありません。市町村から「委託料」として支払われることが法で定められた為、市町村から子どもの保育を委託される受託事業者としての立場が明確化されるでしょう。これらに伴って、従来以上に保育に対する市町村の関与、責任が大きくなると思います。
さらに昨秋、安倍内閣になってから「子ども、子育て関連三法」を踏まえつつ、子育て家庭を社会全体で支えていく総合的な少子化対策の検討がより一層活発に動き出し、平成27年度新制度施行前にも「緊急集中取組期間」(平成25・26年)を設け、約20万人分の保育を集中的に整備できる保育緊急確保事業を打ち出しました。
この事業のコンセプトとしては、
支援パッケージ~5本柱~として、
国は地方自治体がさらにペースアップする場合にも万全の支援をすると言っていますので、大阪市は必ず手を上げると思います。
今年に入ってからも1月20日には、大阪市こども青少年局(こども子育て支援制度構築グループ)より新制度による基本的な事務(利用)の流れの説明会がありましたが、まだ流動的な要素もあり確定的にはなっていないようです。また毎日のごとく制定に向けての作業内容等がホームページにアップされ、資料等も送られてきますが、最終的にどんな形に収まるのか、行政指導で進められるので目が離せません。
また先ほど申し上げたように、「子ども、子育て支援新制度」は、社会保障と税の一体改革の一環の中にあるものです。そのような意味でこれから起こる“社会保障と税”の大改革は、戦後から今日まで日本の社会を支えてきた社会保障の根幹を揺るがすものであり、「介護」「障がい者支援」等々、私たちが活動する福祉の分野、そして私たち社会福祉法人の在り方そのものにも大きく関わってくる大変革なのです
。次回はそのような観点から、私たち「都島友の会」の歩みとともに私たち法人の辿ってきた意義と社会福祉法人としての今後あるべき役割についてもお話ししたいと思います。