大改革を前にして―。

「子ども、子育て支援新制度セミナー」に出席してきました。

先日、大阪府社会福祉協議会主催の「子ども、子育て支援新制度セミナー」に行ってまいりました。セミナーのテーマである「子ども、子育て支援新制度」とは、昨年、平成24年8月に成立した「子ども・子育て関連3法」に基づく、平成27年4月から施行される子育て支援の新しい制度のことです。

出席した感想を申し上げると、この制度が本格的にスタートすることで、今後4~5年の内に、わが国の保育制度の根幹を揺るがすような戦後最大の大改革が起きるのではないかということです。セミナーで受けた新制度に対する解説と分析を私なりに簡単に述べておきます。

申し上げるまでもなく、現在の日本において少子高齢化対策は政策の最重要課題になっています。少子高齢化社会の原因については様々な観点がありますが、大きな原因の一つとして出生率の低下が挙げられます。

では急激な少子化の問題が何故、いかに重要かと云えば、少子化とはとりもなおさず将来にわたって、日本を支える生産労働人口が減少することを意味します。そしてそのことはやがて日本の国力、経済力そのものの弱体化をもたらし、今まで私たちの生活や暮らしを支え守ってきた年金や医療、福祉のシステム、いわゆる生活保障制度が経済力の衰退と共に維持できなくなり、今後一層顕在化する超高齢化社会の出現と共に、日本の社会構造や存在基盤そのものが危うくなるのです。国が国民、特に弱者を守れなくなるということです。さらに皆さんならお気づきだと思いますが、今の日本では少子化の問題と共に、家庭や地域における“養育力”の低下という問題もあります。日本の社会構造の歴史的な変化や推移の中で、家庭や社会的環境から生じる“養育力”の低下、言い換えれば国を支える質の高い人材を育てることが困難になりつつある、その“育てにくさ”の問題が、大きな課題となって浮上して来ています。

そこでこれらの課題の解決に向けて、保護者が子育てについて第一義的責任を有するという基本的認識のもと、出生率低下に歯止めをかけ、“子どもを産み、育てやすい社会”の実現を目指して自公民3党が合意、「子ども、子育て関連3法」が制定されたのです。

「子ども、子育て関連3法」とは、

  1. 子ども・子育て支援法
  2. 認定こども園法の一部を改正する法律
  3. 関連法律の整備等に関する法律(児童福祉法等の改正)

の3つ法律のことです。

「子ども、子育て関連3法」の主なポイントを挙げます。

まず「子ども、子育て関連3法」は、

  • 「子どものための教育・保育給付」
  • 「地域子ども・子育て支援事業」

の二つに大別されます。

最初の「子どものための教育・保育給付」では、

  • 認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付=「施設型給付」、及び小規模保育等への給付=「地域型保育給付」の創設(※都市部における待機児童解消と共に子どもの数が減少していく地域における保育機能の確保に対応)
  • 認定こども園制度の改善(幼保連携型認定こども園の改善等)

これには様々な問題も潜んでいると私は思いますが、幼保連携型認定こども園について、認可・指導の一本化をし、学校及び児童福祉施設として法的な位置づけをするということです。

次の「地域子ども・子育て支援事業」は、

  • 地域の実情に応じた子ども・子育て支援=利用者支援や地域子育て支援拠点、放課後児童クラブなどの充実などがあげられます。

こうした「子ども、子育て関連3法」をもとにして、「子ども、子育て支援新制度」は、

  1. 幼児期の学校教育と保育、地域の子育て支援、現金給付(児童手当等)を包括的に提供する仕組みを作り、
  2. 実施主体として市町村の権限と責任を強化し、
  3. 国は子ども・子育て会議が設置する。
  4. そして恒久財源を確保して、子ども・子育て支援に質・量ともに充実を図る。

との共通の仕組みから検討された制度設計、新たなシステムづくりだと言えます。

付け加えれば「子ども、子育て支援新制度」には少子化対策だけでなく、未来への投資としての幼児教育対策、つまり将来を担う質の高い人材の育成としてすべての幼児に質の高い幼児教育を保証するということ、さらには仕事と子育ての両立支援を行い、女性就労の機会を増やし日本を支える生産労働人口を維持するとの意味も含まれています。

ここでぜひとも強調しておきたいのは、この3法、そして「子ども、子育て支援新制度」は、社会保障と税の一体改革の中に位置付けられたということです。これまで社会保障経費とは医療、年金、介護、この3分野だけだったのです。そこに初めて「子ども・子育て支援」が加わりました。それほど重要でまた歴史的にも画期的なことだと思います。

特に昨秋、安倍内閣になってから「子ども、子育て関連3法」を踏まえつつ、子育て家庭を社会全体で支えていく総合的な少子化対策の検討がより一層活発に動き出しました。ここには消費税問題がはっきりと絡んできています。もうすでに国は平成26年4月、消費税8%引き上げを予定して、保育緊急確保事業実施しており、平成27年度には自治体で実施され本格的な施行の想定イメージまで出来上がっています。

まさにもう待ったなし、出来ることから即座に実行、実現していく政府の動きのように感じられました。戦後最大の大改革は、確実に動き出したのです。

私が受講したセミナーは、昼に休息が1時間ありましたが、10時から5時までみっちりと新制度について詳細な分析と解説がなされ、私にとっても心身とも相当重いセミナーとなりました。

今後新制度の実施主体となるのは市町村であることから、そのレベルでも様々な検討が加えられ、政省令の改正をはじめ制度の詳細設計が行われ、平成2 7年度から本格実施になると思われますが、新しい認定こども園、既存の幼稚園・保育所が、これから先どう変わるのか変わらないのか、保護者の方々がどのように受け入れていくのか・・・、認定こども園への移行は各法人の任意に任されておりますので、この2~3年の動向をしっかり見極めていかねばなりません。

但し現在都島区においても、平成25年度の待機児童解消に向けて、この3~4年で新しい園が4か所、今年度にはさらに3か園、保育ママも数か所増えるなど、今までの“都島友の会王国”ではなくなり、競争の時代、競争の社会に入りました。さらに現行の制度から大きく変革が起こり、私たち都島友の会のおかれた立場も、大きく変わっていくことは間違いありません。

いったい何を競争するのか、何を較べ、競い合うのか、本当に難しい時代が来ていると思います。しかしその中にあっても、大切なことは皆さんの保育に対する熱い思いであり、その思いは必ず保護者、そして子ども達に伝わっていきます。大切なことをより一層大切にせねばならない時代が来ていると感じています。今までどおり熱い思い、真剣なまなざしで子どもたちを見つめ、皆さんの豊かな知識や経験を存分に発揮して、共に頑張りましょう! そして私たちに出来ることから始めていきましょう! すべては子どもたちのため、地域のため、そして明日の日本のためなのですから…。

 

※子ども、子育て支援新制度について詳しい事は、下記ホームページを参照してください。

●内閣府 共生社会政策統括官 子ども・子育て支援ホームページ

http://www8.cao.go.jp/shoushi/

●内閣府 子ども・子育て支援新制度について

http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/

●文科省 子ども・子育て支援法案(内閣府及び厚生労働省と共同提出)

http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/1319301.htm

●厚生労働省 子ども・子育て支援

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/

2013.5.27