辞令交付にあたって

皆さま、おはようございます。

平成28年度、昇格者及び人事異動者、ならびに新規採用の皆さんへ、ただいま辞令を交付しました。今年度も新しい職員の皆さまを多数、お迎えする事ができまして大変うれしく思います。都島友の会を代表し、一言ご挨拶させて頂きます。

本年、平成28年は法人の創設85周年を迎える1年となります。創立記念日である3月1日には各園、各施設、記念のお祝いメニューの食事が出されました。6月には「創立85周年記念発表会」が開催されるほか、今年1年、様々な記念行事や講演、研究発表会などが催されると思います。詳細な内容については、この後、研修会で桜宮保育園の松島園長からお話があると思いますので、この場ではその意義づけについて少しお話ししたいと思います。

平成27年4月1日より、都島友の会では、都島児童センター、友渕児童センター、そして成育児童センターが「幼保連携型認定こども園」としてスタートし、今年は2年目を迎えます。各園が幼保連携型認定こども園としてどのような1年を過ごしたのか、そしてどのような取り組みを行って来たかについては、法人の広報誌「ゆんたく都島Vol.24」に、それぞれの園から立派な報告がなされています。各園の特色やカラー、職員の取り組み方の個性がよく出ているレポートだと思いました。またそれと共に法人としての一貫した教育・保育、その理念や目標とすべき姿もよく踏まえられ、皆さんがこの一年、職員全員でよく話し合われ、これまでの活動や保育内容、子どもたち一人ひとりの何を育みたいかなど、本当によく勉強されたことが如実に分かってうれしく思いました。

もちろん言うまでもないことですが、昨年4月に認定こども園に移行しなかった他の保育園においても、子どもたち一人ひとりの育ち、「知・徳・体」三位一体となった保育活動の視点(ねらい)や教育的意図、具体例をあげれば一人ひとりの発育の確認、チェックリスト、乳児保育からの一貫性、そして地域との密接なつながり、そのような私たち法人独自のあり方、その真なるところはみな一緒です。「ゆんたく」にあった認定こども園各園のレポートもそれぞれ表現こそ違え、いわば友の会の原点、その振り返りは同じだったように私には思えました。

ところで「ゆんたく都島Vol.24」では、フィンランドの「ネウボラ」と呼ばれる子育て支援制度のことが紹介されていました。ひまわりネットの岡本先生が書いておられます。興味のある方はあとで読んで、またご自分でいろいろ調べてみてください。

「ネウボラ」とはフィンランドの言葉で「アドバイスを受ける場所」という意味だそうで、妊娠期から就学前まで長期にわたって、子どもの健やかな成長・発達の支援はもちろん、母親、父親、兄弟、家族全体を、医療や福祉など幅広い範囲にわたって、長期に切れ目なく支援し続ける制度だそうです。フィンランドのみならず北欧などでは、“子どもは社会の公共財(Public goods)”と考えられ、子どもの健全な成長を支える保育は子どもの権利保障であり、乳幼児期からの手厚いケアと教育が大事であり、また子どもの学ぶ権利は乳幼児期から保障されなければならないとの考え方が一般の人々にまで深く浸透していると言われています。「社会の公共財」とは難しい言葉ですね、私なら、“子どもは社会の宝物” と言い換えてみます。北欧やフィンランドでは、社会がそして地域が、子どもを自分たちの宝物と考えている…、だからこそ、母や子だけでなく、家族全体を支えるこのような公的な支援サービスが社会として定着しているのだと思います。私は読んでそのように思いました。

人は生れ育ち、やがて老いていくその営みの中、長い人生の中でさまざまな悩みや苦しみをもち生きていきます。その中で誰かに何かを聞いてほしい、相談したい、公的な援助とともに、家族以外の何らかの、助言・支援が必要である…。もしかすれば、人は生きる上で、公的な援助に頼ることよりも、そのようなまさに制度の狭間にある様々な問題に関して、垣根を低く、気軽に、相談や助言、支援を求めることの方が多いのではないでしょうか。むしろ人々はそのような場所を求めているのではないかと思います。私たち法人には比嘉正子地域貢献事業研修センターというものがあります。フィンランドの「ネウボラ」ではありませんが、比嘉正子地域貢献事業研修センターは、妊娠、出産から子育て、そして介護まで、あらゆる悩みや苦しみを、今後も切れ目なくワンストップで助言支援ができる地域支援、家族支援を目指したいと考えています。

さてこの3月末で都島東保育園、都島こども園の建物を大阪市から移管、有償譲渡されることになりました。昭和51年の建造ですからもう40年が経過しています。先生方が大切に子ども達の環境を整えてくださり、今日までもっていますが、さすがに建物は老朽化してまいりました。国や大阪府、大阪市の補助がつくようになりましたら、建て替えを考えておりますので、今しばらく先生方には頑張っていただきたいと思います。

なかでも都島こども園は建物の移管のみならず、大阪市の指定管理からはずれ、平成28年度からは法人独自の事業が出来るようになりました。名称も都島こども園から、「こども発達サポートステーションそれいゆ」と変更し、新たな出発をすることになります。「こども発達サポートステーションそれいゆ」、少し長いです。“サポートステーションそれいゆ”と呼んでいただいてもよいかと思いますが、“サポートステーションそれいゆ”では、通園事業、相談支援事業、保育所等訪問支援事業の他に、大阪市障がい児等療育支援事業を取得し、地域の子どもたちがイキイキとより適した環境の中で安心して過ごすことができるよう、より積極的に地域に出向き、活動を広げていくことになります。

私たち法人の保育・教育、療育、その歴史に深くかかわっていると云えば、都島児童館があります。日本の戦後のまだ貧しかった、親が子どもを預けて働かないと生きていけなかった時代、子ども達を預かり手を差しのべたのが法人の創設者比嘉正子先生でした。現在70才以上になられる方から、「都島児童館があったから、私は救われた。本もあった、おやつもあった、勉強もできた。ソロバンも絵も、習字も習えた…」そう言って頂いています。その歴史を引き継いだのが都島児童館です。児童館には、教育クラブと生活クラブがあり、教育クラブ、ここはピアノ、習字、モダンバレーなど、都島児童センターの4歳児・5歳児から、小学生、中学生が通い、習っています。他の園もスペースを確保できれば、是非ともこの教育クラブを広げようと思っています。また放課後、小学生たちが安心安全な生活の場として過ごす生活クラブは、都島1組、2組、高倉、中野、友渕の5カ所あり、友の会の各園を卒園していった子ども達が放課後、元気に通っています。

認定こども園や保育園、児童館など、法人の児童施設や保育教育、療育のことをお話してきました。私は法人の話をするときに、ともすればこういった児童施設の話に終始してしまいがちなのですが、法人にはもう一つの大きな柱、高齢者施設があります。

「特別養護老人ホームひまわりの郷」、ここは15年を迎えました、現在80名の入居者とショートステイを利用されている方々がいらっしゃいます。「友渕地域在宅サービスステーションひまわり」、ここは通所介護施設です。デイサービスや居宅介護支援、さらに総合相談窓口を設けています。さらに「ひまわりⅡ」という在宅高齢者をはじめ社会生活上のあらゆる相談を受け付ける窓口を設けています。

人口減少社会、超高齢化を迎えているこの時代にあって、私的には今年は特に高齢者福祉に目を向け、各施設においても今一度見直すべきものを見直していきたいと思っています。法人の高齢者施設に入所されている方も年々介護度が上がり、スタッフの皆さんのケアにもいっそうの工夫が必要となっています。また開設当時最新設備であったものも老朽化してきます。スタッフの皆さんがいくら丁寧な介護を願って頑張ってもさまざまな要因で限りがあります。私たちが目標とすべき介護、それに沿った設備の更新、介護ケアの内容の見直しをする大切な時期に来ていると思っています。

スタッフ皆さんのお知恵やご意見をお聞きしながら、あるべき介護、目標とすべき支援に向けて、一緒に見直していきましょう。

私たちの法人の福祉事業の目標は“ゆりかごから墓場まで”です。人の誕生から生涯にわたる期間、社会福祉活動を通じて関わり、法人の福祉理念である、「すべての人が健康で文化的かつ快適な生活が守られ、豊かな人間生活が実現できることを内包するものでなければならない」との理念実現に向けて、法人全体で取り組んで行かねばなりません。そのためにはもちろん皆さん一人ひとりのスキルアップが大切です。そして法人の歴史、理念、そして諸先輩が成し遂げてきた活動内容を今一度再確認していただきたいのです。私たちが地域に根差した社会福祉法人として、各園、各施設、職員一人ひとりが、社会や地域から、利用者の方々、保護者、子どもたちから、何を求められているのか、もう一度深く再確認いたしましょう。どうすればいっそうの信頼や期待にお応えできるのか、各園・各施設で勉強会や研修をもち、話し合っていきましょう。

保育士や介護士不足からくる待機児童や介護を取り巻く様々な難題など、現在国を挙げて取り組まねばならない種々の問題についても、国だけに頼るのでなく私たち法人としてできることから取り組んでまいりましょう。もちろん皆さんの給与や処遇に関しても全力を挙げて頑張ってまいります。

今年度は今までにもまして実践研修や外部から講師を招いた講演会・研修会を積極的に行い、また地域の人々との交流や地域の各福祉施設との連携を図っていきたいと考えています。地域や人々と共につながり、次世代を育むことのできる安心できる地域づくりに向けて、地域の皆さんから「都島友の会があって良かった!」と心から思って頂ける法人をめざしていきましょう。

話が大変長くなりましたが、創立85周年を迎えるにあたり、法人としての想いをお話しさせて頂きました。この続きは各園へ寄せて頂きお話をさせていただきたいと思います。長時間、ありがとうございました。

2016.4.6