“育て、育てあう” 恵まれた環境の中で

都島桜宮保育園の歩み

本年4月、都島桜宮保育園は、かねてから懸案だった都島地域の待機児解消のため、増改築を行うとともに既存の建物を全面改修いたしました。完成した園舎は、法人創設者比嘉正子夫妻の想いを託した2つの三角屋根(ピラミッドパワー!!)、壁面は信楽焼の陶板の「ひまわりのレリーフ」、3階ホールには「日本の保育の始まり」と伝えられる「少子部連と子ども達」をモチーフにした緞帳など、以前の園舎の面影を残しつつ、パステル調に装いも一新、内部は天然素材やナラの無垢材をふんだんに取り入れ、子どもたちをやさしく健やかに包み込む魅力たっぷりな空間に生まれ変わりました。そして準備万端、いよいよ来春には幼保連携型認定こども園として出発します。

都島桜宮保育園は、平成3年(1991年)4月、都島区中野町5丁目 淀川貨物線跡地に開園しました。都島区、とりわけ当園の所在する一帯は昔から淀川と深い関わりがあり、川との深いつながりの中で人々の暮らしが営まれ、淀川そのものの存在が文化を育む場となっていました。

川辺の水は大変きれいで、飲料水となり、豊臣秀吉の頃はこの水を「茶の湯」として愛用されたとも伝えられ、この辺を「青湾」と名付け、今も「青湾」の碑があります。また明治20年代頃までは「水屋」という人たちが飲料水として売っていたそうです。

一方、淀川は暴れる河川でもありました。大正14年(1925年)頃までは、5~6年に1度は大雨のたびに氾濫、大雨で橋も流されることもあり「源八の渡し」なる渡し舟の舟付き場は、昭和30年代後半までありました。そのため、河川改修や築堤工事の記録が数多く残っています。川幅が狭く蛇行していた下流部を川幅500mを超える放水路(新淀川)に開削、併せて毛馬の旧淀川には洗堰が設けられ、洪水時に大阪市内に流入する水量の遮断・調節が可能になりました。同時に、船の航行ができるよう水位を調節する毛馬閘門がつくられました。

本来「きれいな水」「飲める水」だった淀川も、近代化と共に、汚染され、明治28年(1895年)に大阪市水道の水源地として「桜ノ宮水源地」を作りました。その水を貯める水がめが、淀川沿いから都島桜宮保育園、隣接する特別養護老人ホームからまつ苑の地下に埋もれています。(建築中、基礎工事で発覚)。水道70周年記念として「大阪水道発祥之地」の碑を昭和40年に建てられ、今もその碑が残っています。

現在この一帯は、当園の園舎、道を挟んで北側には大阪市立総合医療センターやグラウンド、そしてモダンで斬新なマンション群等が建ち並んでいますが、ここには日本国有鉄道(国鉄)の淀川電車区と淀川駅(貨物駅)のある広大な土地でした。ただ昭和20年の大阪大空襲を受け全焼してしまいます。

戦後、焼け野原となった跡地に大阪市電都島車庫ができ、長らく大阪市電や市バスの車庫として使用されていましたが、時代が移り、地下鉄やモータリゼーションの流れと共に廃止。平成2年(1990年)、再開発の計画が立ち上がります。

時はまさにバブルの時代。桜宮リバーシティ・ウォータータワープラザなどグレードの高いマンション群が続々と建設され、保健センター、勤労青少年ホーム、そして平成5年(1993年)、大阪市制100周年記念事業の一環として、大阪市の既存の5施設を統廃合し、大阪市の中核病院の役割を果たす大阪市立総合医療センターが開院されます。当時、この地の再開発の際、「子どもから高齢者まで」を包摂する福祉ゾーンとして、「街づくり」の相談が寄せられました。それを受けて法人は、企画、構成、設計までを準備しましたが、これまで高齢施設運営の経験がないこと、また当時の経営状況等を鑑み、児童施設の建設運営のみを引き受けることにしました。「子どもが育ち、子どもを育てあう街づくり」、その拠点としての都島桜宮保育園の誕生です。

誕生の成り立ちを原点として、街全体で ”育て育てあう“地域ぐるみの保育を目標にしました。当園が、「親育」の場、「地域共生」の場であると考えたのです。そのためには地域や保護者との繋がりを深め交流していくことを第一と考え、またその継続が大切であると考えました。27年経った今日も、歴代園長をはじめ全職員がその理念を継承し、地域の皆さんとの連携を大切に、”街全体で育て育てあう“環境作りの努力を続けてくれています。

小、中、高等学校、高齢者の皆さまとの世代間交流は、異なる年代、多様な関わりの中で、命の大切さや豊かな人間への育ちを学んでいます。地域社会に向けての活動、特に近隣の方々との交流も活発です。地域諸団体の行事には積極的に参加し、先日は、「昭和会」の皆さんが都島中学校グランドで栽培をした「じゃがいも」掘りを体験させてもらいました。 ”野菜作りの師匠“と呼ばれる近所の店主さんからは、玉ねぎ、キュウリ、ナス、スイカなど季節の野菜作りを教わり、種まきから収穫まで、生命の不思議さ、育てる楽しさを学ばせていただいています。保護者の方々との交流も特色です。親子行事「ふれあいデー」を開催し、周辺の公園でのスタンプラリー、クッキング(カレー作り)、園庭開放日には地域の親子参加(月1回)、子育て相談、諸々悩み相談も受け付けています。お父さん同士の交流を図る「パパイベント」も今年で5年目、父親目線での子育ての悩み、趣味の話題、そこから新しいつながりも生まれてきました。

職住近接の快適な都心の中、行事や給食とは一味違う楽しい食のイベントを催し、もちつき、ぜんざい、おでんパーティー、たこ焼き、焼きそば、お好み焼き、さんま焼や魚の三枚おろし、バーベキューにそうめん流し等、戸外の運動場で、食べる楽しみ、作る楽しさを味わっています。

淀川の土筆や菫、たんぽぽ、桜、ビーチバレーに天神祭、花火、秋の紅葉…、美しい環境、地域の良き隣人にも恵まれ、都島桜宮保育園の子どもたちは、乳児期の段階から、人と関わる喜び、楽しさの中で、安心、安全、ゆったりと落ち着いた雰囲気の中、心地よい生活リズムと食習慣の基礎を養っていきます。身の回りのことが少しずつ自分でできるようになる幼児期に入ると、「幼児教育・養護」が始まり、知・徳・体、三位一体となったバランスのいい教育・保育は、開園当初より続いています。運動会、発表会での発表では、子どもたちの「やる気」「チャレンジ精神」「楽しむ姿」は圧巻です。

従来の定員120名から、現在223名(分園25名、本園198名)に定員を増員しても、園の人気は高く、希望者が多いため、職員確保に苦戦しておりますが、法人全体で取り組む研修や勉強会を含め、元職員、非常勤職員の援助の中、家庭的であたたかい環境の中で、今までにも増して質の高い教育・保育を提供できるよう、私たちはさらなる努力を傾けてまいります。

「子どもも育ち、我も育つ」。当園創設以来の精神です。どうかご支援、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

都島桜宮保育園の子どもたちと

ゆんたく都島 Vol.29(2018.9)