お帰りなさい、〈もうひとつの我が家〉に。

『福祉はすべての人が健康で文化的かつ快適な生活が守られ、豊かな人間生活が実現できることを内包するものでなければならない』 ― 法人の創設者、比嘉正子の言葉です。

1931年(昭和6年)。日本が大陸へと目を向け進出して行った時代。比嘉正子は養護と教育を併せ持った都島幼稚園を設立、日本の子どもの”育ち“の環境整備に力を注いでいきます。(当時の幼稚園教育の資料は、法人本部資料室にあります)

1945年(昭和20年)終戦。焼け跡に空腹でさまよう親子があふれる中、何をするにも資材乏しき時代にあって、「もう一度子どもたちの園を作ってください!!」との母親たちの熱い願いに支えられ、苦心に苦心を重ね、ようやく集めた貧しい資材で出来たのが都島児童館。戦後の法人の再起となる園舎でした。粗末な建物、それでも母親や子どもたちは待っていてくれました。卒園児たちが石を拾ったり、運動場の整備を手伝ってくれたり…。職員、保護者、地域の方々の力を結実したつつましい、しかし希望に満ちた園舎でした。その後法人は長時間、短時間を併設した保育部・幼児部の創設、全国に先駆けた乳児保育や障がい児保育、学童保育へと活動を広げていきます。

法人では、”人の誕生から最後まで“人の生涯を包括する福祉を行いたいとの思いがあり、特に高齢者福祉を実践したいと思っておりましたが、なかなか夢は果たせずにいました。

1991年(平成3年) 都島桜宮保育園開園の際、〈子どもから高齢者まで〉を包括する福祉ゾーン(街づくり)を計画しましたが、諸事情から老人施設を手掛けることを諦めざるをえませんでした。

1997年(平成9年) 友渕地域、北部運動公園の一角で、デイサービス(通所介護)をやってみないかとのお話があり、予定地は元カネボウ(株)様から、(大阪市経由で都島友の会へ指定給付を受け)設計、補助金申請を急ぎました。当時は大阪市の指導も懇切丁寧でした。

1999年(平成11年)1月 友渕地域在宅サービスステーションひまわり竣工式。鉄筋コンクリート造、地上3階建。高齢者の保育園とのイメージを描いての出発でしたが、さまざまな人生や生活環境で過ごされ、自身の体調も年齢も異なる方々の集まり…。一人ひとりに寄り添いながらも、子どもの保育とは全く異なる課題や難しさもありました。しかし現在では25名~30名の方が健康チェック・入浴、季節感ある食事を楽しみ、レクレーションや仲間づくりを楽しまれています。

2000年(平成12年)年の初頭、都島東保育園東隣りの大阪市水道局の空き地に、高齢施設予定の公募。但し競争率が高く、4法人の激戦です。法人の保育園隣接地であること、デイサービスの経験もあること、法人の長年の地域福祉や地域貢献等々、プレゼンテーションに全精力をかけました。同年12月、特別養護老人ホームの設置の決定を受け、夜に昼に設計の先生方と打ち合わせ、「私が入居するならこんなのが…、あんなのが…」と議論を重ね、また予算範囲内で足を出さないよう、借入が少なくて済む方法を考えるなど、法人全施設の中で考えられることは全て出しきり、その結果認められた時の嬉しさはたまりません。設計はプレゼンテーションを受ける時に充分なるものができており、業者入札、近隣説明、とんとん拍子に進めることができました。         

2001年(平成13年) 鉄筋コンクリート造、地上6階建築工事着工、9月、工事半ばで入居願書受付。80名定員に268名が申込み。

2002年(平成14年)2月、工事終了。入居準備、事務処理、職員研修、建物の使い方(安全管理)。3月、竣工式。見学披露、当日参加者861名。4月、特別養護老人ホームひまわりの郷の門出となりました。

こうしてようやく、法人の乳児から高齢者まで、人の一生を包括する福祉への想いを実現することができました。

〈ひまわりの郷〉のコンセプトは、『ようこそ、もうひとつの我が家へ』。入居者が我が家におられるような気持ちでお暮しになられるように…。そのため建物の各階も1丁目、2丁目、3丁目、4丁目、5丁目と名付け、各室は〇の番地と、ご近所のようなしつらえに…。今までの住み慣れたお家と同じ訳にはいきませんが、病院とは違った居室づくり、環境づくりに努力しました。

法人の創設、都島幼稚園の第一期生も今や95歳近くになられます。ご自分が幼稚園に登園し、今度はお子たち、そして孫たちが登園。やがてデイサービスを利用され、〈ひまわりの郷〉に入居された、お顔馴染みな方もおられます。本当に、「ようこそお帰り頂きました!!」。

現在では最長老104歳の方を筆頭に、ボランティアの皆様や家族会のお力にも支えられ、カラオケ、お絵かき、習字、詩吟、季節の行事やお誕生会等、イベントやコンサートと盛りだくさん。中でも法人の保育園児との交流は皆さま待ち遠しいようで、毎週どこかの園児が訪問して来ると、子どもたちの可愛いしぐさ、握りしめる手、ハグしてくる温もりに心ときめかし、頬がゆるみ、日々への活力源の一つになっておられる様が伝わります。 

〈ひまわりの郷〉も開設16年が経過しますと、補修、改装が必要になります。昨年までに空調設備121台入れ替え、浴室の個浴への整備変更、各階、廊下、居室のクロス張替や防水、熱中症や感染症等の予防設備も整えました。

今年4月には1階の集会室を大幅にリニューアルし、誰もが気軽に利用できるカフェテリアひまわりを開設しました。オープンテラスでコーヒーや軽食を楽しみながら、入居者の方をはじめ、ご家族、地域の人たちなど、様々な人々が語らい、憩うことの出来る開かれた場になるようにとの想いでつくらせていただきました。カフェテリアの開設と共に、今年度の事業としては、(看取り介護の研修と実施)、(介護分野技能実習生の受け入れ)、(防災拠点としての施設づくり)を目標としております。

特に看取り介護の実施は、ひまわりの郷での最期を迎えたいと希望される入居者様、ご家族様に寄り添えるよう、昨年度から、委員会、研修、話し合いなど準備を進め、今年5月現在、お二人の方を看取ることができました。 

今後は法人の高齢者施設デイサービスひまわりと特別養護老人ホームひまわりの郷での職員間の交流、職員間の一体感を高め、地域高齢者の包括的なケアの推進を図ってまいります。また介護職員の人材不足の改善として外国人技能実習生制度や外国人介護士の採用と共に、職員が仕事に喜びや生きがいを感じ、遣り甲斐をもって勤めることの出来る職場環境づくりを進めることで、お一人おひとりがその生涯の最期まで安らかにお過ごしになられる介護を目指していきたいと考えております。ようこそ、〈もうひとつの我が家〉へ!お帰りなさい、〈もうひとつの我が家〉に!

ゆんたく都島 Vol.31(2019.9)