令和に寄せて

2006年(平成18年6月)理事会で理事長選任を受け、仲田貞子前理事長より引き継ぎ今年で14年目になります。

私事を少し顧みますと

時の流れは早いもので、本年3月1日で創立89年(令和2年)を迎え、来年2021年(令和3年)には90周年を迎えることになります。歴史が長いという事は、時代や日本の国の流れと共に歩んで来たという事、その間、本当にさまざまな出来事がありました。

昭和6年開園当初、日本は富国強兵を御旗に未曽有の戦争へと向かっていきました。戦争とはむごいものです。人心は乱れ、犠牲になるのはいつも子どもたちです。食べ物、着る物、住む所なく、親や家庭と離ればなれ、衛生面にも恵まれず……そのような環境下に置かれると子ども達の成長は大きな妨げを受けてしまいます。戦争が終わり、人々が自らの生活や国の再興をかけてがむしゃらに生きる中でも、多くの子どもたちがそこから取り残されていったのではないかと思います。

長い歳月、様々な社会の変化の中で、法人の諸先輩はいつも、「今一番必要とされるものは何か」「今、手を差し伸べられる事は何か」「都島友の会に出来ることは何か」を考え、私たちにできる事から始めていくこと、私たち一人ひとりができることをコツコツ行動し積み上げ、それを輪として広げていく|。そうしたことが都島友の会の伝統となっていきました。

歴史が古いという事はまた、その時々に建てた建造物が痛み、老朽化していくことでもあります。あるいはその反対に、その時代時代、明日の社会に求められるものを新たにつくっていくことでもあります。日本は自然災害の多い国です。近年も大きな地震や台風、豪雨と日本列島の被害は大変でした。この間、法人はその時々に整備や補修、大修理をし、時代に即した環境整備に力を注いでいきました。

待機児童問題、高齢化社会、障がい、制度から落ちこぼれた人々…。様々な課題があり、その中で私たちの出来る地域貢献とは?社会福祉法人の役割とは?と模索し、0歳から100歳以上の皆さん全てが憩える場所を作れないだろうか、人の誕生から終活まで、その営みの中で何か一つでも私たちに支えられる事がないかと行動し、法人で頑張る職員のために働きやすい職場とは何かを考え、そのための環境づくりに力を注いできました。

振り返って、毎年、よくぞここまでやってきたなと思います。もちろん私一人で成し遂げられたものではありません。大勢の皆様に支えられ、ようやく今日までやってこれました。

法人や各施設の規模が大きくなるにつれ、幸いなことに適任者に恵まれ、職員はもちろん、保護者や子どもたち、ご家族、利用者の皆様、そして地域の方々にも恵まれました。法人運営を”つかさどる“本部、理事や評議員の方々、役員の皆様、経営会議、施設長会、副園長会、主任会、さつき会、比周会、保護者会、本当に強力なご支援を頂き、ここまでこれました。

創設者比嘉正子の教えの中に、

その1 「人生は出会う恩師(人々)によってきまる」

良き人々との出会いを大切にしなさいとの意味だと理解しています。そのあとにこんな言葉が続きます。

その2 「リーダーは淋しいものだよ」

その3 「リーダーは人に先んじて苦しみ、人に遅れて楽しむんだよ」

その4 「社会は豊富に、家庭は簡素に」

その5 「国家社会、人類の共同体の尊重。恨みつらみは、己を殺す」

昨今、ふと就寝前などにこれらの言葉が脳裏に浮かび、時に自らを戒め、自らに言い聞かせます。支援し、助けてくださる人々がいても、最終決断する怖さです。

最近、ある人との会話の中でこんな言葉を耳にすることがありました。

「お元気?」「元気そうで良かったわ」「お身体どうです」「心配していたのよ」「まあ嬉しい」「ようこそ」「あら、ごめんなさい」「無理なさらないで」「大丈夫、大丈夫、心配いらないわよ」「ありがとう」 「何でもいいから、できることからコツコツと」「できるでしょ、やればできるのよ、ほらね」なんと心地よい言葉でしょう。陽だまりにいるような会話でした。ホッと一息つけ、前に進めました。

時に楽しい決断もあります。今回、都島東保育園は『ひがみや児童センター』へと名称が変わり、『こども発達サポートステーションそれいゆ』と隣接併合して出来上がったった新たな建造物、その中の大ホールを私のイメージで作らせてもらいました。

ホールの中に大きな「がじゅまるの木」があり、木の中から動物たちが顔を出しています。木枝には小さな動物たちがハンモックに乗り、小鳥たちや虫たちが豊かな葉っぱの中から顔をのぞかせます。こぼれ落ちる光、その間から小さな花が、葉を揺らす風を感じる、すれあう音が聞こえる。鳥のさえずり、動物たちの話し声、何を話しているのかな。春になると花が咲き、かぐわしい匂いがする…。何の花かな、きれいねぇ、きれいでしょう、本当にきれい!

舞台に向かって左手(西側)を開けると、大きなトランポリンが、登り棒があり、南側(後)には、春夏秋冬に咲く花と実がなります。(サクランボ、ミカン等) 右手(東側)を開けると、小さな森の中にきのこのランチルームがあり、北側トイレには、白雪姫と小人さんたちが遊んでいます。1階、2階、3階、4階、ゆっくり歩いてみてください。いろいろな風景に出会えます。これは楽しい決断というより、子どもたちと大いに楽しみたいとわがままをさせて頂きました。新しくなった『ひがみや児童センター』『こども発達サポートステーションそれいゆ』の詳細は別紙で案内させて頂きます。

時代は移り社会は変遷してもやはり社会の抱える問題は後を絶たず、新たな問題、難問が生まれてくる…。だからこそ私たちに出来ること、その一つ一つに丁寧にコツコツ取り組んでまいります。

2020.4.20